東京都立大学大学院では吃音の認知神経科学研究に取り組み、日本精神神経学会よりフォリア賞を授与。
現在は自費の相談支援サービスの運営や児童発達支援事業所のスーパーバイザーなどを行いながら、慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科の共同研究員として、吃音を中心として流暢性障害の研究にも従事している。
統合的アプローチは、流暢性形成訓練と吃音軽減訓練を合わせた方法です。発話速度の低下、軟起声、軽い構音器官の接触、呼吸コントロール、フレージングなどのテクニックを用い、これまでとは異なる発話パターンを学習してもらい、それを日常生活へ般化させることを目指します。しかし、特定の単語や場面への予期不安、あるいは否定的自動思考が強い場合には、日常生活への般化が難しい場合があります。そのため、心理療法のテクニックを応用し、吃音に対する否定的態度や回避行動を減少させることが必要です。
今回、中学生から成人の吃音のある方を対象とした言語聴覚療法の実際を、実習を交えながらお話しさせて頂きます。
吃音のある小学生への言語療法については、幼児期や成人期に比べてエビデンスレベルの高い報告が少ないことが指摘されてきました。近年ではこれまでの研究のレビューが進み、それに伴い介入法や評価法の整備も試みられています。本講ではこれらの知見を概観するとともに、日本国内で使用可能なリソースなどの情報を提供します。さらに、演者が臨床で実践している方法についても紹介し、ことばの教室の先生や言語聴覚士にとって役立つ内容としていきたい。
RASS理論に基づく訓練法には、幼児から小学生までを対象とした「RASS環境調整法」と学童から成人を対象とした「年表方式のメンタルリハーサル法」があります。本法は、吃音症状に注目し、それらを流暢にしようとするアプローチではなく、生活において症状が出ることなく自然で無意識に話している部分に着目し、それらを増大させるという考え方の療法です。発吃する前の状態(自然で無意識な話し方)に戻ることを目指すため、吃音進展段階の悪化とは逆の流れ(4層→3層→2層→1層→正常域)で改善、寛解へと導きます。当日は、RASS理論に基づく訓練において実施する手法について説明します。
吃音と言語発達が専門。RASS理論に基づいた吃音児・者への支援に取り組んでいる。特別支援教育における言語聴覚士の支援のについても研究。
近著には「吃音・流暢性障害 クリア言語聴覚療法」など。